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2021年12月8日
藤岡石油店の藤岡陽平社長が繰り出す新規事業は、地元に貢献するという明確な基準がある。
緻密な計算と異業種交流を重ねて企業とコラボし、ビジネスと地域振興を両立させる。そのモチベーションは息子の継承意志にあるという。
KEY PLAYER 今月の人は 藤岡石油店 藤岡 陽平(伊藤忠エネクス系=兵庫県神戸市)
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神戸市西区押部谷町は、三宮から山間部に向かって車で約1時間の場所にある。伝統文化が息づき、農村部とニュータウンが共存する街だ。
神戸三木線(県道22号線)を北上していくと、突如看板が現れた。
黒メガネが印象的な男性が「フラット7 新車の軽自動車が月々コミコミ1万円!!」を指さしている 藤岡石油店・神戸押部谷SSの看板だ。
自ら広告塔になっている、この男性こそ今回の主人公・藤岡陽平社長(44)である。
消防団の団長やPTA会長なども歴任しており、恐らくこの町に彼の顔を知らない人はいない。
彼は2030問題を機に、このままでは沈んでしまう「普通のSS」を、さまざまな策で「連艘」する道を選んだ。そこには
という2つの強い動機がある。
「どんなに良い接客をしても、車が電気になったら行き止まり」
― だからこそ藤岡社長は「緊急でないが、重要」な3つの新規事業を始めた。
新車の軽自動車を専門に扱うマイカーリース(7年間)。
フラット7を選んだ理由は、地元で人気な軽自動車が、とにかく安いこと。
「コミコミ1万円」は、よくあるうたい文句だが、実はボーナス払いの価格がまったく違う。同じ車種でも7年間の総額が数十万円変わってくる。
「お客にとって安い、お得が一番のメリット」と藤岡社長。同SSでは、さらに7万円分の洗車カードやリース期間中のガソリン3円/ℓ引き、ガソリン満タン納車という得点を付けて販売している。
数カ月でエンジン内部が変わるという日進月歩の時代に、フラット7は「めっちゃ売れてる」そうだ。
キッチンカーを2万円/月で提供するなどBtoBの導入も進む。看板とネットで一見客が来店することも多いという。
店側のメリットとしては、販売時の売り上げのほか毎月ストック収入があること。さらに、契約が終了する7年後に新たなビジネス展開が期待できること等が挙げられる(後述)。
信販会社のローンが通らない人でも中古車が買える自社ローン販売。
カーマッチを導入したきっかけは、フラット7が通らなかった80代の方の存在だという。
障害のある40代の子どもがおり、病院の送迎にどうしても車が必要だが、年齢がネックになった。自社ローンがあれば、こうしたお客を「助けてあげることができる」と考えた。
もちろん、ローンの通らない人はリスクも高いが、支払いの遅延等が発生した場合は、遠隔操作が可能なGPSでエンジンをストップさせ、車を回収することができるという。
「レンタカーが熱い! 移動手段としてこれから伸びる」と藤岡社長。レンタカーを線で結ぶ新規事業を考えおり「エリアを席巻したい」と息巻く。
8月下旬の取材日、神戸押部谷SSには車の長蛇の列ができていた。
午前、午後の各1時間限定で20ℓ以上の給油客に、地元産の生ハチミツと紅茶、GABA炭酸水のセットとティシュボックス等を配付するイベントを開催していたのだ。
なんという大盤振る舞い!
聞けば、6月は食パン、7月はシフォンケーキ1ホールを生ハチミツの代わりに配ったという。
もちろん、すべて押部谷の地元企業とのコラボだ。
生ハチミツのセット(60個)はこの日、午前で配付終了となる盛況ぶりだった。
このイベントの目的は「LINE情報を取る」ことにあった。スマホの操作に不慣れな年配の方も、スタッフに聞きながら続々と友だち登録をしていく。
こうした魅力的なおまけが毎月もらえるとなれば、イベントを心待ちにするお客も多いだろう。給油客の増大と合わせ、ポスティング結果も含めた「地元のビッグデータを保有したい」と藤岡社長は話す。
今年5月には秋葉台SSで地元アイドル「KOBerries」とのコラボイベント「防災訓練&スタンドライブ」を(消防署に確認のうえ)開催した。
定休日の日曜日に施設設備を紹介する防災訓練を行い、次いでスタンドライブを開催した。
同イベントを主導したのは、23歳のフリーター・あっきー君だ。彼はアイドルオタクの心をくすぐる「アイドルが自車を洗車してくれるプレミアムチケット付き洗車券」等の販売を考案。当日は50人のお客で10万円の洗車券が売れたという。
このほか、春には藤岡家の田んぼで、地元民50人と田植えとバーベキューを開催した。「いずれ農業法人をつくって、農業でも地域を元気にしたい」と意気盛んだ。
こうした数々のコラボイベントは2年半前に入会した異業種交流会からの発想という。自社だけでなく、地域全体のWIN―WINがここから生まれている。
さて…これらのユニークなイベントには、実は「裏コンセプト」がある ―「働き方改革」だ。
一般的な働き方改革は、働く時間を短く=給料が減る―ことがほとんどだ。
そのデメリットを解消するのがSS以外の仕事の提供。①ウーバーイーツ方式と、②スキルアップ方式だ。
「好きな時、好きなことをしながら、好きな服で行える」のがポスティング。SS開店時間の短縮に伴い、主に高校生のアルバイトが行う。
ポスティング中の時給はもちろん、ポスティングされたチラシを見て来店したお客がいれば3000円、成約すればさらに3000円がインセンティブとして支払われる。
高校生たちは団体戦を組むなど「自分たちで戦略を考える」という副産物まで付いた。
「ポスティングにも信頼が大事」と藤岡社長は考えている。
「アルバイトは良い子たちが多く、スピード感、確実性のどちらをとっても業者を抜く。アルバイトの紹介も多く、人に困らないこともメリット」
アイドルイベントを主導したあっきー君は「アイドルグループの運営をしたい」と夢見ている。その彼にリーダーを任せることで、イベントにまつわる時給ほか、将来への一助となる経験を積ませた。
自動車整備士を目指すアルバイトには、SS終了後にレンタカーの整備を任せている。
「整備は時に思い切りが大事。お客の車では怖くてできない整備も、レンタカーだから大丈夫、とやらせる。こうした経験を積めば〝超即戦力〟になれる」
藤本社長は大学卒業後、神戸のホテルに入社した。支配人を目指して頑張っていたが、地元SSの閉店で多忙になったと帰れコールが入った。
「ホテルの仕事に未練があり、すったもんだあって、家業に入った」と明かす。当時30歳だった。
入ったからには「3代目で潰すわけにはいかない」と、さまざまなチャレンジをしてきた。新規事業については両親から反対もあったが、それを押し切るだけの緻密な計算をしていた。
フラット7を始めて4年。あと3年で最初の契約が満了を迎える。乗り換えで生まれる多くの車を、レンタカーとして業者に販売する、カーマッチ用の中古車として販売するなど「再びビジネスチャンスがある」と、藤岡社長はとても楽しそうだ。
思い描く理想形は「おしゃれな押部モール」の創出だ。
人口減少の続く町に、お客を呼べたら雇用も生まれる。地元振興と子どもたちの未来に向けて、同社は「生きていくためのエネルギー」を、これからも発信していく。
≫≫≫ プロフィール
藤岡 陽平(ふじおか ようへい)
昭和52年神戸市生まれ。大阪学院大学卒業後、オリエンタルホテル(神戸市)に勤務。30歳で家業に入り、2年前に代表取締役に就任。
資格は危険物乙1〜6種。整備士2級ほか
≫≫≫ 沿 革
藤岡石油店
昭和42年、藤岡社長の祖父・勉氏が設立。
平成29年からフラット7、カースタレンタカー、カーマッチを導入。
今年6月、神戸押部谷SSをリニューアルオープン。ほかに秋葉台SS
月刊ガソリン・スタンド 2021年 10月号
P.160 「KEY PLAYER キープレイヤー 今月の人 藤岡 陽平 藤岡石油店(伊藤忠エネクス系=兵庫県神戸市)」より
【 掲載ガソリンスタンド 】
carenex 神戸押部谷SS / (株)藤岡石油店(兵庫県神戸市西区)
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