本社の管理職に最年少で抜擢された。
ちょうど経営再建の最中。不採算店舗の改善を任された。
だが年上の部下の抵抗は激しく、「お前に何ができる?」と詰められた。
次第に自分の職務に負い目を感じ、数字で論破することで正当性を保つようになった。
辞表は常に懐にしのばせている。ただの見せかけではない。
責任を全身全霊で全うすることが、せめてもの禊と思っているからだ。
もう一つ使命がある。それは新たな道筋を開くこと。
自分の実力と、湘南菱油の可能性を示すために。
かつての前会長が自身の辞任を発表した際、長年連れ添った元専務にこう言った。
「ありがとな…」これほどシビれる5文字を知らない。
そのためなら喜んで粉骨砕身の覚悟を捧げよう。